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アニメ ウマ娘 プリティーダービー Season2 全13話のうち6回泣いた

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それくらい面白かったという話をします。

アプリゲームから入った人間だし、アニメも10話が最新話の時に見始めたくらいニワカなので詳しく語れるほどの知識がありませんが、この作品の素晴らしさとコンテンツに出会えた感謝の気持ちを息継ぎ少な目で書きます。

※注意 ネタバレあり※

内容としては王道のスポ根アニメ。レースに勝って、ケガをして、復帰に向けてトレーニングを積み重ねるも、調子を落として、何のために走るのか模索して、仲間やライバルに助けられながら成長する、人間賛歌*1の物語。意外性は無いし、ほぼ予想通りに物語が進む。何せ実在の競走馬の人生を元として物語を構築しているのでWikiを見ればネタバレ満載。私も我慢できずにモデルになった競走馬のwikiを読み込んでしまった。それでもこれだけ楽しめて心動かされたのはアニメーションのクオリティの素晴らしさ、その一言に尽きると思います。

まず引きの強さが凄い。毎週「え!? 次回どうなっちゃうの!?」というシーンでしっかり終わる。1話目のラストからしてとんでもなかった。レースに勝ったトウカイテイオーがウイニングライブで激しい踊りを見せる。観客のボルテージは最高潮。しかしサビ前でちょっと足の動きがぎこちなくなる。それに気づくトレーナーとシンボリルドルフのカットイン。そのままカメラはロングショットからトウカイテイオーが映るバックスクリーンにズームし、サビに入ると同時に黒い背景に「トウカイテイオー」のタイトルが暗転する。本作の主人公を強調しつつ不穏な雰囲気を醸し出す完璧な演出。ヘビーロック調の激しい音楽との相性も抜群で、1話の締めとしてこれ以上ないと思わせる幕引きでした。

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引きの強さと言ったらエンドクレジットの演出も言及したい。特にエンドクレジット最後の絵。2~5話までは憧れの存在であったシンボリルドルフを追いかける子供時代のトウカイテイオーだった。ただ憧れや夢に向かって走り続ける話に反映されていた。それが6話~11話はライバルであり親友でもあるメジロマックイーンが手を差し伸べる絵だった。目標を見失ったトウカイテイオーに「私が目標になる」とメジロマックイーンが宣言する話だった。話の内容に沿ってエンドクレジットの絵が変わったのである。その演出が爆発したのが12話だ。12話はとんでもない話だった。走れなくなったメジロマックイーンが絶望する話。トウカイテイオーの目標であろうと走り続けたメジロマックイーンがケガで走れなくなった。その姿をトウカイテイオーに発見される。気丈に振る舞うマックイーンだが、話を始めたら慟哭が止まらなくなった。作中、常に己を律し続けたマックイーンが「もう走れない」「あなたとの約束を果たせない」と初めて弱音を吐き、子供のように泣きはらす。胸が締め付けられ言葉を失う。その姿を見て、ぽつりぽつりと、言葉を選ぶように語り掛けるトウカイテイオー。優しく、だけれど芯のある声だ。それでもマックイーンの絶望は晴れない。「奇跡がおきない限り走れない! あなたと一緒ですわ!」とキツくあたってしまうマックイーン。「そうだよね」「だから起こすよ、奇跡」と宣言するトウカイテイオー。作中屈指とも言える作画の美しさも相まって、とんでもない破壊力だった。私は5回見た。5回とも泣いた。それくらいエモーショナルな内容だった。そのエモーショナルな興奮がエンドクレジットで爆発した。まず歌が変わった。ED曲はトウカイテイオーメジロマックイーンの2人がデュエットする歌だ。トウカイテイオーから歌い出して、歌詞がキャラの心情とリンクしていた。それが12話では歌い出しがメジロマックイーンになった。全てが逆に流れる特殊EDだった。メジロマックイーントウカイテイオーに手を差し伸べる最後の絵も変わった。トウカイテイオーメジロマックイーンに手を差し伸べる絵になった。全13話の内、このエンドクレジットが使われたのは12話だけ。この話だけの演出。初めて見た時は興奮のあまりうっはー! ひゃーっ! てなった。

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そしてキャラクターの素晴らしさも言及したい。キャラクターに関しては全員個性的だし可愛いし見どころがあるし主人公が複数いる群像劇と言っても差支えが無いくらい手抜きなくしっかり描いていた。特に7話と8話はライスシャワーが完全に主人公だった。レースシーンの演出は個人的に最終話を凌駕していると言えるほど素晴らしく心が奮えた。ライスシャワーが主人公の劇場版が何かの手違いでTVシリーズに差し込まれたのかな? と思えるくらいに、作画・演出・物語が一つの作品として完成されていた。そして語らなければならないキャラクターがもう1人いる。ツインターボだ。ツインターボトウカイテイオーの話こそ、本シリーズ最大の見どころだと私は思っている。これこそが脚本の力、そしてフィクションの力だと思っている。ツインターボは基本的にギャグキャラのような設定で、重い話が多い作中の良い清涼剤的な役割を果たしていた。そんなツインターボが5話にトウカイテイオーから「諦めないことの大切さ」を説かれ感銘を受ける。いつかトウカイテイオーと対決するために(ツインターボなりに)諦めずに奮闘して重賞レースで勝利も収め、10話で挑戦場*2を叩きつける。しかしトウカイテイオーはケガで走られなくなっており、もう諦めてレースに出られないことを受け入れていた。挑戦場*3の返事が無いことを直訴するため、ツインターボトウカイテイオーに詰め寄る。次に出るオールカマーで逃げ切って勝ったら今度こそ対決しろと再び挑戦の意志を伝える。しかしトウカイテイオーは「もうレースには出ない、勝負は諦めてよ」と言う。それを聞いてツインターボは「諦めるなんてテイオーらいくない!」と言い放つ。トウカイテイオーから「諦めないことの大切さ」を説かれたツインターボは、その本人から「諦めて」と言われても受け入れない。受け入れたくない。対してトウカイテイオーは「オールカマーには強いウマ娘がたくさん出る。逃げ切れるわけがない」とキツくあたる。ツインターボは「絶対逃げ切ってやる!」「諦めなければやれるとこ見せてやる!」と啖呵を切る。そうして迎えたオールカマー当日。トウカイテイオーは引退ミニライブに出る予定だった。オールカマーは見られない。それを知ったツインターボの仲間たちはライブをジャックしてバックスクリーンにオールカマーの中継映像を流す。そこには強豪たちを前に大逃げに打って出るツインターボの姿が。言葉を失うトウカイテイオーツインターボが吠える。「これが諦めないってことだー!」。宣言通り逃げ切って1着でゴール。トウカイテイオーは唇を震わせ動けない。仲間たちが「戻ってきて! また一緒に走ろう!」と呼びかける。会場に広がるテイオーコール。トウカイテイオーは泣きながら「もう一度頑張ってみる」と宣言する。トウカイテイオーから諦めないことの大切さを教えて貰ったツインターボ。今度はツインターボトウカイテイオーに諦めないことの大切さを見せつけた。エンドクレジットでツインターボに土下座するトウカイテイオーが微笑ましい。実在の競走馬に関して言えばツインターボトウカイテイオーは対決していないし、ツインターボオールカマーで優勝したこととトウカイテイオーが復活したことは何の関係も無い。ツインターボは「オールカマーで燃え尽きた」と評されるほどその後は不振が続き、中央競馬から地方競馬へ移籍しても大きな活躍を見せること無く引退を迎えている。つまりオールカマーが最大の見せ所だった。これを物語の中にこれだけエモーショナルに落とし込み、ツインターボという記録より記憶に残る名馬を、ウマ娘というコンテンツの中で活かした精巧な脚本にほれぼれするしかない。最高だった。これを見てツインターボを好きにならない人がいるだろうか。いないと断言できるほどの作中屈指の名シーンだった。

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最後にウマ娘というコンテンツの巧みさにも言及したい。先述の通りウマ娘は実在の競走馬の人生をモデルにしている。作中に気になったキャラクターをwikiで調べることで2度楽しむことが出来る。これがすごい。アニメ作品単体だけではなく、実在の競馬の世界まで興味が広がる。どんどん世界が広がっていく。wikiで気になるエピソードが見つかれば、より深く世界に浸ることが出来る。まだ登場していない競走馬に思いをはせることも出来る。なにせまだまだ面白くなる可能性が秘められているコンテンツだ。まだまだ描かれていない競走馬が沢山いる。このワクワク感こそがウマ娘最大の魅力であり、巧さであり、凄さだと私は思う。もう既にこれだけ楽しませて貰っているのに、まだまだ楽しくなる要素がある。こんなことがあっていいのだろうか。ありがとう。という言葉以外見つからない。

そんな訳で息継ぎ少な目で書き散らしました。とにかくアニメ最高だった。ゲームも面白い。なにやら漫画*4も面白いという評を目にした。出すメディアがことごとく面白い奇跡のようなコンテンツ。今後の展開も楽しみです。

*1:正確にはウマ娘賛歌

*2:原文ママ

*3:原文ママ

*4:ウマ娘シンデレラグレイ