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【ネタバレ】『映画 HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』がめちゃめちゃ面白いという話をまたします。

世の中では今週公開した新作『映画プリキュアラクルユニバース』の話題で持ちきりですが、僕は今回も2018年10月に公開された『映画 HUGっと!プリキュアふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』がめちゃめちゃ面白いという話をします。またします。ネタバレ全開なので、未見の方はご注意ください。

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ポスターも素晴らしいです

もう本当、やっぱり面白いです。DVDを購入してから娘と2回、1人で3回見返しましたが、やっぱり面白いです。歴代プリキュアを全然観たことが無い僕でもめちゃめちゃ楽しめるというのは、本当に凄いことだと思います。そんな訳で今回は個人的に良かったところなんかを書き散らしていこうと思います。

本作は出し惜しみがありません。冒頭から初代の3人が登場、その立ち姿の堂々たるや王者の風格で、否が応でも期待が高まるのですが、いきなり3人合体技(エキストリーム・ルミナリオ)が炸裂、かませ犬的な敵を塵へと還します。ここまでわずか2分。この圧倒的なテンポの良さがたまりません。そして突如、悪役のミデン(CV宮野真守)が現れ、初代3人に襲い掛かるのですが、打撃の衝撃で地面が2メートルぐらい抉れる破壊力を描写しつつ初代3人を圧倒します。初代の力を魅せた後、その初代を圧倒する力を発揮する敵。こいつヤバいな感を演出し、ここまで4分。冒頭に必要な要素を全て出し尽くしたパーフェクトな演出です。

その後、ピクニック中のHugプリ勢を、歴代プリキュアの記憶と能力をコピーしたミデンが襲い掛かります。歴代プリキュアの必殺技が主人公勢に襲い掛かる熱い展開です。最高。宮野真守さんが「ウルトラハッピー♪」とか「キラっと閃いた♪」とか「ここで決めなきゃ女がすたる!」などのプリキュアの決め台詞を言うもんだから、監督は分かっているなと思いました。余談ですが劇場鑑賞時、後ろの席の淑女3人組みが「マモちゃんが…マモちゃんが…」とうわ言のように、言葉にならないくらい興奮しておられました。それぐらいの破壊力がある。それが宮野真守プリキュアの台詞を言うということ。人によっては本作最大の魅力だと思います。

その後、ワンオペ育児の大変さの問題提議をしつつ、仲間との思い出が無にされた野乃はなちゃんの心が折れ泣き出してしまいます。それに対してハリーが「なんや! プリキュアとあろうものがへこたれてる場合やちゃうやろ!」とハリーなりの叱咤激励をしますが、それに対してなぎさが「そんな言い方やめて! プリキュアだってただの中学生だよ! 自分でどうすることも出来ない時には、誰だってそうなるに決まってるじゃない!」となだめる一連のシークエンスが、本作がオールスターズ映画でありながらHugプリの作品であり、且つふたりはプリキュアの作品でもある事を思わせてくれます。そんな心が完全に折れているところで再びミデン襲来。その攻撃を生身のなぎさが受けとめ、ボロボロになりながらも「私、ほのかがいないとダメだから! ほのかのことが大好きだから!」と熱い胸の内を叫びます。きまし。それに対してミデンがほのかの記憶を使って「あらなぎさ、私も覚えているわ、先生の結婚式行ったこと、文化祭でロミオとジュリエットをやったこと」とパーフェクトな煽りをしてきます。この宮野真守がゲスい! をランキング形式にしたらTOP5に入るくらいゲスいシーンです。憎らしさで涙が出ると思いました。その場に孫悟空が現れてミデンをボコボコにして欲しいって本気で思いました。それでも挫けないなぎさの一途な想いでほのかが復活、涙を流しながら「なぎさ」と覗き込み感謝を伝えるシーンに涙が止まりません。二人の友情を100%描いた完璧な演出です。まさに至高。そして復活した2人で再び変身、再度ミデンに挑みます。その姿を見て、心が折れかけていた我らがはなちゃんがも再び立ち上がります。そして「これしきのことで、心折れるとか、私のなりたい野乃はなじゃない!」という魂の叫びは声優・引坂理絵さんのベストアクトだと思うくらい、まさに魂の慟哭。120%作品を盛り上げる熱演。激熱。そしてヒーロー着地。そんなはなちゃんの姿に心打たれた仲間たちがやっぱり復活。ここに心を200%通わせた初代2人&Hugプリ勢が揃いました。想いの強さはプリキュアの強さに比例します。こんな最強のプリキュアに敵うわけありません。ここまでの熱い展開でまだ半分未満。驚くべきことに30分しか進んでいません。この濃さ、熱量、何なんだこの作品は。

キレたミデンが世界中の人の思い出を吸収して大きな城? オブジェ? みたいなところに引きこもるのですが、ここからCGアニメに転換します。このCGのクオリティが凄いです。東映のCG技術の集大成と言っても過言ではありません。世界に通用するレベルだと思います。CGとなったプリキュアたちがバラバラになった後にいろいろあって集合します。このバラバラの時に巨大モフルンが出てくるのですが、うちの娘が本作2番目に好きなシーンです。子供も楽しめるアトラクションのようなシーンがしっかり描けているのが本作が傑作たる所以です。あと、ちっちゃくなった歴代プリキュア(ベビキュア)達みんなが遊んでるシーンの可愛さが最高です。ベビキュアが遊んでるシーンだけで短編映画を作って欲しいレベルです。可愛さという概念の具現化としてこれ以上のものは無いと思います。「プリキュアごっこしよう♪」とか言ってるんですよ。ずっと観ていたい…。

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本当、ずっと見ていたい…。

合流したプリキュアたちはミデンの巣のようなところにたどり着きます。そこで古いカメラを発見したところキュアアンジュちゃんが目を輝かせてカメラのオタク知識を披露。それに対してエトワールが「あの子ちょっと詳しめなんで」という一言で片づける完璧な脚本。一部の淀みも無くパーフェクト。そしてミデンの正体を知ったプリキュア達は動揺しつつも他の記憶の解放のためにミデンと三度戦います。ただ1人、キュアエールだけはミデン境遇に同情し、心情を読み解こうと、その動機を理解しようと動けずにいる。カメラはキュアエールを中心に回り、背景でミデンと死闘を繰り広げる仲間たちが描かれます。このシーン。最高にエモーショナル。監督の宮本浩史氏をプリキュア映画界のマイケル・ベイと位置付けたいくらいクール。頬に被弾しても構わず思考を続ける演出が憎いくらいカッコいいです。

キュアエールの衝動的な行動によりキュアブラックキュアホワイトがベビキュア化。更にHugプリ勢もミデンに飲み込まれてしまい、戦えるプリキュアが居なくなってしまいます。初見の時、この展開は驚きました。ベビキュアから復活させるためには、そのプリキュアとの思い出をいっぱいの持った人物が必要ですが、Hugプリ勢はミデンに飲み込まれ、初代2人もベビキュア化、他のプリキュアも全てベビキュア化、残るははぐたんとハリーですが、Hugプリ勢は飲み込まれてしまったので、復活出来るプリキュアがいません。完全なる詰み。どうすんのこれ。また余談ですが、この際にステンドガラスの隙間に挟まって抜け出せなくなったハリーをベビキュア達が引っ張ってくれるシークエンスがあるのですが、うちの娘が本作で1番好きなシーンです。何度も観てケタケタ笑ってます。

この危機を脱する方法をはぐたんが見つけます。いきなり我々の方を見つめて「フレフレ、あるよ~」と第三の壁をぶち破って来た時は「うそっ」とビックリしました。ここで繰り広げられるハリーの大演説が最高です。「みんなはどのプリキュアがすきや!?」「1人じゃなくてええ、今まで好きだったプリキュアを全部呼んだってくれ!」「プリキュアの可愛かったとこ、カッコ良かったとこ、何でもええから沢山思い出したってくれ!」「みんなが大好きやったプリキュアを蘇らせるんや!」。この演出は歴代プリキュアをほとんど知らない僕でもグッときました。プリキュアを応援させる演出で子供心をガッチリ掴みつつ、オールスターズ作品として、15周年作品と、これ以上はあり得ないと思えるほどベストな演出で大人の心もガッチリ掴まされました。娘と一緒にミラクルライトを振りながら応援した思い出、そして劇場がペンライトの光で一体となった光景は最高の思い出です。

ラクルライトの力で歴代プリキュア全員が復活。この激熱な展開。さぁ、ここから全員でミデンをボッコボコにするんだろう! と期待に胸が膨らんでいると、キュアエールは1人、ミデンの中に残ります。「まだ出ていくもんか。私が出て行ったら、またミデンが1人になっちゃう」と心の中にしがみつきます。キュアエールはミデンを倒すのではなく、救おうとしているのです。熱い。超激熱展開。このキャラクターを象徴している行動、そしてHugプリという作品のテーマを反映させたパーフェクトな展開です。そんなキュアエールの行動を観て、歴代プリキュアたちが同調します。「私たちもいこう!」と一丸となってミデンを救おうとするのです。最高。こんな展開を待っていた。オールスター映画として、これ以上ない展開です。

キュアエールの行動に戸惑い、暴れるミデンから小さいミデンが現れ、それを歴代プリキュアがテーマ曲と共に必殺技で三國無双のように薙ぎ払っていきます。この一連のシークエンスで本作のボルテージは最高潮を迎えます。もう、本当、最高以外の言葉が出て来ないくらい、この展開は最高です。やったぜ! 派手な必殺技がドカドカ出て、非常に脳に良い映像です。疲れた時、行き詰った時、ストレスを抱えた時に見ると脳が安らぐと思います。プリキュアの必殺技には癒しの効果が期待できます。

歴代プリキュアの猛攻を受けたミデンの心にヒビが入り、キュアエールがミデンの深層へ入ります。そこは雨がやまない悲しみに満ちた世界。「ずっとこうなんだ」「僕はこれしか知らない」という悲しみに打ちひしがれたミデンに対し、キュアエールは「ミデンは偉いね」「自分で何かを変えようとしたんでしょ」と優しさで包み込みます。キュアエールのキャラクター性とHugプリのテーマ性を兼ね備えた完璧な脚本です。ここの宮野真守さんと引坂理絵さんの演技が素晴らしいの一言に尽きます。僕は泣きました。脚本、演出、BGM、そして声優の演技に泣かされました。映画が総合芸術と言われる所以がこれです。隣の娘に泣いている事を気付かれたくなかったので涙は拭きませんでした。

キュアエールの優しさに包まれながら、ミデンを深層世界から表の世界へ連れて行きます。そこには歴代プリキュアが輪になって待っていました。奇麗な夕日をバックに、この戦いの決着を描きます。最後はカメラに戻ったミデンを使って記念撮影。これ以上ない決着。完璧な終焉。みんな笑顔のハッピーエンド。最高です。ただ、歴代プリキュアが一同を介してピクニックをしているところを見るに、プリキュアたちが同じ世界/同じ時間軸で活躍していたのかと思うと、プリキュアって現実世界に落とし込むとご当地アイドルみたいな存在なのかな? と思いました。

これだけ最高な作品を作り上げた制作陣には感謝しかありません。上映時間73分間にこれだけ詰め込んだのは本当にすごいと思います。本当にありがとう。これからも素敵な作品を作り続けてほしいです。新米プリキュアおじさんとして応援し続けたいと思います。